47.茯苓飲

[構成] 茯苓【甘平】5、朮【苦温】4、人参【甘微寒】3、生姜【辛温】3、陳皮【辛温】3、枳実【苦寒】1.5

茯苓と朮は利水剤で胃腸などの停水(胃内停水)を除き、人参と共に低下した消化機能を回復させる働きがあります。枳実はミカン科ダイダイの未熟果実で、滞った気を通じ、痞を散らし、去痰し、腹中の硬結を除く効能があります。陳皮はミカン科ウンシュウミカンの成熟した果皮で橙皮と同じ物とされており古方薬議には「脾を健やかにし、逆気を鎮め、嘔咳を止め、痰涎を消し、胃を開き、水穀を利し、魚腥毒を解す。」

とされています。枳実・陳皮はともに苦味が強く健胃作用を持っています。

[出典および口訣]

@「外台の茯苓飲は、心胸中に停痰宿水ありて、自ら水を吐出して後、心胸間虚し気満ちて、食すること能わざるを治す。痰気を消し、能く食せしむ。」

                          『金匱要略・痰飲咳嗽病篇』  

A「此の方、膈間の停痰宿水を退け、食を進む。後世の異功散、四君子湯、六君子湯など皆この方より変化し来る。」           『校正輿輗』 有持桂里

B「胃反呑酸嘈雑、心下痞鞭、小便不利、或いは心胸痛する者を治す。又、毎朝悪心し、苦酸水或いは痰沫を吐するを治す。(略)老人、常に痰飲に苦しみ、心下痞満して飲食消せず、下痢し易き者を治す。又、小児、乳食化せず、吐下止まざる、並びに百日咳にて心下痞満し、咳逆甚だしき者を治す。共に半夏を加えて殊に効あり。」

『類聚方広義』 尾台榕堂

胃反:食後脘腹が脹満し、朝に食すると夕暮れに吐し、夕暮れに食すると朝に吐す。その吐いたものは、不消化物であり、元気がなく、舌は淡紅色で、脈は細く無力であり、食べると反って出るのでこの名がある。

嘈雑:俗にいう胸やけこと。酸水によるものは、脾胃の虚寒で水穀が化せず、これが停滞して酸となって引き起こすもので、酸水が胃からあふれ出るような悪心を呈し治療は温中和胃の方による。

C「此の方は、後世いわゆる留飲(胃内停水)の主薬なり。人参湯の症にして胸中(胃中)痰飲ある者宜し。南陽は、この方に呉茱萸・牡蛎を加えて澼飲(吐水症)の主薬とする。」                    『勿誤薬室方函口訣 浅田宗伯    

D「脾虚し、津液をめぐらすこと能はず。水蓄えて飲となり胸膈の間に貯へ、満ちて上溢す。故に自ら水を吐出して後、邪去るも正虚す。虚気上逆し、満ちて食すること能はざるなり。参朮大いに脾気を健やかにし、新飲をして聚めざらしめ、姜橘枳実は以って胃家未尽の飲を駆り、日に痰気を消し、能く食せしむる所以のみ。」  沈氏註


[証および適応症]

証:元来脾胃虚弱で、やや虚証を帯び貧血性で、冷え性の人の胃部停滞感、胃部の痞え、呑酸、嘈雑(胸やけ)を訴えそのほとんどに胃内停水が認められます。

またしばしば食欲不振、悪心、嘔吐、胃部疼痛、腹部動悸の亢進、尿利減少などの症状をともなうこともあります。上腹部(心下部)の腹直筋や胃部には堅い抵抗があって、胃部に比べて下腹部は軟弱なものが多い。

適応症:慢性胃炎、胃下垂症、胃アトニー症、胃拡張症、胃酸過多症、溜飲症、胃腸神経症、

[加減方および留意点]

@本方の適応症は、半夏瀉心湯適応症に類似するが、半夏瀉心湯よりも胃部ないしみぞおち周辺部の痞えが著しく、且つ腹部に動悸を自覚することがあり、水分の停滞感があっても下腹部における腹鳴は見られない。

A本方はその構成からみて、橘皮枳実生姜湯と人参湯を合方し人参湯の甘草・乾姜の代わりに茯苓を配し胃寒を去るより胃内停水の除去を主な目的にしています。

B茯苓飲加半夏4 茯苓飲に半夏1味を加えることにより小半夏加茯苓湯の方意が加わり、より悪心、嘔気、噯気、胸やけの強いものに用います。茯苓飲よりもやや虚証で水毒症状の目立つ症状に使用されます。

C茯苓飲合半夏厚朴湯 茯苓飲に半夏6、厚朴3、蘇葉2を加えた処方になります。

茯苓飲の証に咽喉の異物感や痞塞感、心悸の亢進や不安感、咳などの神経性の症状がみられる時に用います。

D悪心・嘔吐が激しく、口渇があり浮腫を生じる時は五苓散を用います。



ホームページへ   前のページ   目次に戻る   次のページ

Copyright