46.酸棗仁湯

[構成]酸棗仁【酸平】15、知母【苦寒】3、川芎【辛温】3、茯苓【甘平】5、甘草【甘平】1

主薬は酸棗仁で、名医別録には「無毒、煩心して眠ることを得ず、臍の上下の痛み、血轉、久洩、虚汗、煩渇を主治する。中を補し、肝気を益し、筋骨を堅くし、陰気を除き、人を肥健ならしむ。」と記されています。酸棗仁には養肝作用・安心作用があり直接肝経に働き、肝気の衰えによる不眠状態を治す合理的な生薬です。また知母には清熱、滋潤作用があり酸棗仁と組んで、虚熱による大脳の興奮性を低下させ催眠に効果があります。そのうえに茯苓の安心作用、川芎の活血作用が加わっています。

[出典および口訣]

「虚労、虚煩で眠ることができない時には、酸棗仁湯が主治する。」

『金匱要略・血痺虚労病篇』

また、尤怡の記した金匱要略心典には「目が覚めているときには、魂は目に仮寓していて、眠るときは肝にかくれている。虚労の人は肝気が虚しているので魂がかくれることができず、その故に眠れなくなるのである。魂が居所にいないとその隙間に濁痰燥火が乗じて入り込み、煩が起る。酸棗仁で肝を補い、気を収め、知母、甘草で熱を清し燥きを潤し、茯苓、川芎で気を順らし痰を除けばよい。」とあります。

[証および適応症]

証:普段からあまり体力のない人で、貧血しやすい人が、肉体疲労や精神的な疲労にさらされ、血や津液が不足したために発生した虚熱によって脳が興奮状態になって眠れなくなるもの。殊に心気疲れて眠ることのできないものに用いる。慢性病のある人、虚弱な人、老人などで夜間眼が冴えて眼れないというものに良く効きます。

適応症:虚労性の不眠

[留意点]

@一般に炒の修治をして用いるが、炒りすぎると催眠の効果が薄れるので注意する。

A体質が虚弱な人に用いることが多いが、極端に胃腸が弱いともたれることがある。

B酸棗仁湯の証でのぼせや上半身の熱感があるときには、虚熱であるが黄連を極少量加味するとよく奏効します。

不眠症に対する漢方治療

@ 黄連を含む処方。

 黄連はキンポウゲ科の清熱解毒薬で、血熱および胃部の炎症が原因で起こる精神不安・不眠・煩悶感・意識混濁などを治します。

黄連解毒湯…頭が冴えてなかなか眠れない。気分が落ちつかず、つまらないことが気にかかる、イライラする、のぼせる、という傾向がある時に用います。便秘があるときは大黄を加味するか三黄瀉心湯にします。

甘草瀉心湯…胃炎、胃下垂症、胃アトニー症などの患者で、胃部に膨満感があってみぞおちがつかえて硬くなる(心下痞硬)、雷中雷鳴、嘔吐、下痢があり、夢が多くて安眠ができないというものに用います。

加味温胆湯…温胆湯に黄連1、酸棗仁5を加えた処方。温胆湯だけでも、神経過敏で驚きやすく、時に気鬱になる人が疲れて眼れない時に用いますが、この二味を加えると安眠効果が更に高まります。

Aその他不眠によく使われる処方。

加味帰脾湯…帰脾湯に山梔子、柴胡を加えた処方で帰脾湯の証でのぼせ、頭痛、不眠などの上焦の症状がある場合に用います。帰脾湯の証とは、平素から体質虚弱で血色が悪く、胃腸のあまり丈夫でない人の貧血、健忘、動悸、神経過敏、不眠、物忘れ、鬱症状のある者をいいます。

三物黄芩湯…手足がポカポカと熱くて気持ちが悪く、眠れない時に用います。



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