42.越婢加朮湯

[構成] 麻黄【苦温】6、石膏【辛寒】8、生姜【辛温】3、大棗【甘平】、蒼朮【苦温】4

大青竜湯から桂枝、杏仁を抜いたのが越婢湯でこれに朮を加えたのが越婢加朮湯です。

麻黄は代表的な発汗解熱剤、鎮咳去痰剤ですが、この処方では利尿祛湿剤として使われ浮腫みを取り体の痛みなどを緩和します。麻黄剤の中には麻黄と桂枝が同時に組み合わされている方剤と、そうでないものとがあります。麻黄と桂枝が同時に組み合わされている麻黄湯、葛根湯、大青竜湯などには発汗作用があるから、自汗のある者には用いず、汗の出ない場合にもちいます。一方越婢加朮湯や麻杏甘石湯、は麻黄があって桂枝がなく、しかも石膏が配合されているので、表に邪があっても悪寒はなく、口渇や多汗のある者に用います。本方は麻杏甘石湯の杏仁の代わりに大棗と生姜を配したものであるから、喘鳴を治す効は麻杏甘石湯より劣り、浮腫を去り、利尿を増すという点では優れています。石膏は天然の含水硫酸カルシウムで、解熱、清熱、止渇

作用があり、実証の人が煩燥し、体の一部分が腫れて熱をもっている場合などに清熱薬、鎮静剤として用いられます。朮はオケラの根茎で、健胃、利尿、効果があり、胃内停水、体の痛み、尿不利、浮腫、下痢などに用いられます。

[出典及び口訣]

@「裏水は、一身面目黄腫し、其の脈沈、小便利せず、故に水を病ましむ。もし小便自ら利するは、これ津液を亡ふ。故に渇せしむるなり。越婢加朮湯こ主る。」

                          『金匱要略、水気病篇』

 「肉極(肉の一部が隆起したポリープなど)するときは、則ち身体の津脱し、腠理開き、汗大いに泄れる。萬風気、下焦脚弱す。本方これを治す。」

                         『金匱要略、中風・歴節病篇』

A「凡そ、その腫状脈状、大略分消湯の症に類して、喘咳甚だしく呼吸短促なるもの。是れ水胸中に聚まるなり。先ず其の上を疏すべし。越婢加朮苓湯これをつかさどる。或いは云う。此の症、背に悪寒と煩渇とを主として用ゆと。此の説的當の論に非ず。悪寒と渇とは有るものあり。又無きもあり。水気胸膈に聚まり、喘咳などあるを主とし用ゆべし。」             『導水瑣言』和田東郭

B「此の方は裏水とあれども、越婢湯方後に風水加朮四両とあれば、風水の誤りと知るべし。朮を加うるものは湿邪に麻黄加朮湯を与うと同手段なり。千金に附子を加えて脚弱を治するも、風湿の邪の為に脚弱する者にて、即ち今の脚気、痿弱なり。」                   『勿誤薬室方函口訣』 浅田宗伯        

C『金匱要略、水気病篇』には「越婢湯、風水、悪風し、一身悉く腫れ、脈浮にして渇せず、続いて自汗出で、大熱無きは越婢湯之を主る。悪風の者には附子一枚を加う。風水には朮四両を加う。」とあります。この越婢湯の条後、朮加味の条について、尾台榕堂は次のように記しています。 

「東洞先生曰く、渇せずは全く渇せずの謂に非ず。大熱なし、亦全く大熱無しの謂に非ずと、按ずるに渇せずは疑うらくは渇の誤ならんか。白虎湯の症に曰く、大熱なく、口燥き、渇すと。此れに拠って之をみるに、其の渇の症あるや明らかなり。」

「此の方に附子を加えて越婢加朮湯と名づけ、水腫し、身熱し、悪寒し、骨節疼重し、渇して小便不利する者を治す。按ずるに、外台の刪繁肉極論を引いて曰く、肉極者云々は、肉色を変じ、多汗にして体重く、怠惰、四肢挙ぐるを欲せず、飲食を欲せず、食すれば則ち咳し、咳すれば則ち右脇下痛み、陰々として肩背に引いて、似て移動すべからず。名づけて萬風という。」 『類聚方広義』 尾台榕堂 

[証および適応症]

証:浮腫あるいは汗が出て小便不利などを訴える者で体力は充実し、胃も丈夫で、暑がり、口渇のある者に用います。これはの水がに浮かんでくるためで、裏とは表すなわち皮膚、皮下組織(肌肉)、筋、表在の関節などより深い所にある消化管などを指します。この水のために脈は沈み、浮腫んで体は重い。

 腹証は筋肉がしまっていて、全体によく充実しており、この点が防己黄耆湯の腹証と異なります。また脈は多くの場合は浮であるが、浮腫の強いときは沈になることもありますが搏ち方には力があります(実脈)。

(臨床上の使用目標)

@顕著な浮腫、尿量減少がある。

実腫:緊張のある浮腫で患部を指で押さえても、あまりへこまず、すぐに戻るような浮腫を伴ない尿の出が悪いときによく奏効します。

A暑がりで汗が多く、口渇をよく訴える。

発熱ではなく、身体の内に熱があり、その為に起こる症状と考えられます。

B関節や下肢の腫痛。

関節に水がたまることも多く、関節が腫れて熱を持っていることを自覚的または他覚的に感じる時には石膏の入った処方で実熱を取ります。

適応症:四肢関節の浮腫、疼痛、筋肉痛、変形性膝関節症、慢性関節リウマチ、痛風、腎炎、ネフローゼの初期の浮腫、脳卒中後後遺症、眼疾患、夜尿症、

[加減方および留意点]

@浮腫とともに瘀血の証(内出血、血腫など)がある時は茯苓、桃仁、大黄を加味します。

A慢性関節リウマチなどの場合、虚証になり冷え性の人が多くなってきます。麻黄自体は温める薬ですが、石膏が冷薬ですので越婢加朮湯だけでは強すぎることがあります。このときには附子を加えて越婢加朮附湯にするか、桂枝湯二、越婢加朮湯一の割合で合方して桂枝二越婢一湯加朮とします。

B患部を押すとへこんで、なかなか元に戻らないのは虚腫です。防己黄耆湯などが適応します。



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