40.炙甘草湯

[構成]炙甘草【甘平】3、桂皮【辛温】3、大棗【甘平】3、生姜【辛温】3、地黄【甘寒】6、人参【甘微寒】3、麦門冬【甘平】6、阿膠【甘微温】2、麻子仁【甘平】3

地黄・麦門冬・阿膠は滋潤・清涼の効があって、枯燥を潤し、栄養をたかめ、煩熱をとり、間接的に強心の作用があります。甘草と桂皮は動悸を沈め、また人参と組んで強心健胃作用を表します。この処方は桂枝去芍薬湯に地黄・麦門冬・人参・阿膠を加えた処方の構成になっています。桂枝去芍薬湯は感冒などで表虚(自汗している)人に発汗剤を用い、胸中苦しく動悸するものに用いる処方です。

[出典および口訣]

@「傷寒解して後、脈結代、心動悸する」         『傷寒論』太陽病下篇

A「虚労不足、汗出でて悶し、結代、心悸するものを治す」  『金匱要略』虚労篇

B「肺痿、涎唾多く、心中温温液液たるを治す」      『金匱要略』 肺痿篇

C「この方は、心動悸を目的とす。凡そ心臓の血不足するときは、血管動揺して悸をなし、而して心臓の血動、血脈に達すること能はず。時として間歇す。故に脈結代するなり。此方は能く心臓の血を滋養して脈路を潤流す。是を以て動悸を治するのみならず、人迎辺の血脈凝滞して気急促迫する者に効あり。是余数年の経験なり。また肺痿の少気して胸動甚しき者に用いて一時効あり。竜野の秋山玄瑞は此の方に桔梗を加えて肺痿の主とす。」           『勿誤方函口訣』 浅田宗伯

D「脈の結代と心の動悸にあり。脈の結代とは、脈が早くなくて、つまり脈のうち方がゆっくりとしていて、時々休むものをいう。心動悸とは胸のどきどきすることなり。平常弱き人にて汗が出て胸苦しくなる者。また過労などした後、汗が出て胸苦しく動悸する者。熱が少しあり、咳が多く痰や唾が多く出て、胸の中が何とも言えず気持ち悪しき者、本方は虚弱な人又は無理しすぎたる諸病によし。」

                           『古方薬嚢』 荒木性次    

E「此の方の妙は脈の結代に在り。故に一名を復脈湯と云う。何病にても脈結代するものは先ず此の方を用うべし。蓋し後世、血気を調え虚労不足を補う処方、多くこの方より出生するに似たり。」                   有持 桂里

[証および適応症]

証:虚証で栄養衰え、燥きが強く、皮膚枯燥し、疲労しやすく、手足の煩熱、口の渇き、大便秘結がちで息つきが熱く、心悸亢進、あるいは脈の結滞、不整脈と息切れを訴えるのを目標とします。

適応症:心臓病(心臓弁膜症や心内膜炎)、バセドウ氏病、産褥熱、肺結核

動機と脈の結代…脈結は遅脈で不整脈、代脈は数脈と遅脈が不規則に交わって起こる不整脈、心動悸は自他覚的に心悸亢進が認められるもの。有熱性の感染症で熱のために心臓衰弱を起こしている場合、無熱性の心内膜炎、心臓弁膜症各種の不整脈(バセドウ氏病で動悸、発汗、肺動のもの)。熱候があるもの、(口が渇き、手足の芯がほてり、息が熱く感じる、便秘する)に効果が高い。

心中温温液液たるもの…金匱要略肺痿篇に「肺痿、涎唾多く、心中温々液々たるものは炙甘草湯之を主る」とありますが、この肺痿とは肺が虚して萎縮している状態で、濁唾涎沫を咳吐するのを主症とする慢性消耗性疾患のことです。之には甘草乾姜湯が行く虚寒の状態にあるものと、炙甘草湯が行く虚熱の状態があります。多くは久咳して燥熱が発生して肺を傷り、あるいは他の疾病の誤治の後、さらに津液を傷ることによって、肺の湿潤さが失われ、漸次萎縮して起こる病気です。症状としては咳嗽し、粘稠な涎沫を吐し、咳声は激しくなく、動くと気喘し、口乾咽燥、体は痩せ、潮熱し皮毛が乾枯します。「心中温温液液たる」とは、心臓部の深い所が何となくむかむかと悪心を催すような感じをいいます。

虚労…虚証の人で疲れやすく、動悸しがちで、その動悸は心臓部でも手足その他の部分でもドキンドキンと脈をうつのが判るという人、或いは手足特に手掌、足蹠がほてり、それが春夏には余計劇しく、汗をかき易い者、顔が火照って口燥感を覚えるもの、その他自律神経の不安定症とか肺結核の疑いとかの診断で、ぶらぶらして一向にはっきりせぬものなど、要するに、虚の血熱(虚の心熱)の虚労を目標にして使用します。

[加減方および留意点]

@服用後に胃腸障害(胃のもたれ、下痢など)のみられる場合は不適用です。



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