38.四物湯

[構成] 当帰【甘温】4、川芎【辛温】4、芍薬【苦平】4、地黄【甘寒】4

当帰は温性の駆瘀血薬であり、冷えを温め、血行を良くし、鎮痛、鎮静効果があります。川芎もまた温性の駆瘀血薬であり、月経痛、腹痛、頭痛、鼻疾患などに用い、芍薬は筋の痙攣を緩めて疼痛を止め、婦人の処方に多く含まれます。地黄には、滋潤、強精強壮、増血作用などがあり、婦人や高齢者の繁用処方に多く含まれます。

[出典および口訣]

@「栄衛を調整し、気血を滋養し、衝任虚損、月水不調、臍腹きゅう痛(絞痛)、崩中漏下、妊娠宿冷、胎動して安からず、血下りて止まず、及び産後の虚に乗じ、風寒内に搏ち、悪露下らず、結して瘕聚を生じ、小腹堅痛、時に寒熱を作すを治す。」

                        『和剤局方』 (婦人諸病門)

A「一切血虚の主方と云えども、専ら肝血を補うを本とする。人身に血を主る蔵あり。

 其の一つは心血、心は血を生ず、二つには脾血、脾は血を総ぶと云うて一身の血を総べあつむ。三つには肝血、肝は血を蔵すと云うて周身の血この蔵と会聚す。故に心血の虚、肝血の虚、脾血の虚それぞれ別ちあり、然れども多くは肝血の虚なり、四物湯これを主る。総じて血虚は多くは独り虚するものに非ず。男は吐血、下血、女は小産崩漏、或いは産すること数度、或いは男女共に金瘡にて血を泄すか、いずれかにより失血することによって血虚をなすなり、その漏れ去る血はすべて肝血なり。此れ肝は血の常に聚まる蔵なる故也なり、又四物湯は肝部の薬なるによって心脾肝の分かちなく一切の血虚の主方とす。      『方意弁義』 岡本一抱子

B「此の方は血虚栄弱、一切の血病、婦人、調経、補血の本薬也。」 

                           『牛山方考』 香月牛山

C「燥を潤すと知るべし。大便泄瀉するには用い難し。涼薬故に陽気を損ずるなり。

  悪心あるものは用うべからず。」        『当壮庵家方口解』 北尾春圃

D「是は全く血虚を補う薬にて、血分へ附くきたる病には、いつもこの四味が入用ぞ。実に名高き方なれば、これを原にして組立たる薬方は幾らあるとも知れざる位のことなり。」                      『方彙口訣』 浅井貞庵

E「この方は血道を滑らかにする手段なり。それ故、血虚は勿論、瘀血血塊の類、臍腹に滞積して種種の為すものに用ゆれば、たとえば戸障子の開闔にきしむ者に、上下の溝に油をぬる如く、活血して通利を付けるなり。一概に血虚を補うものとなすは非なり。東郭の説に任脈動悸を発し、水分の穴にあたりて動悸最も激しきものは肝虚の症は疑いなし。肝虚すれば腎もともに虚し男女に限らず、必ずこの所の動悸激しくなるものなり。是即ち地黄を用いる標敵となる。」

                         『勿誤方函口訣』 浅田宗伯

[証および適応症]

証:一般に、顔が青白く、貧血気味で、皮膚枯燥(カサカサして栄養状態が悪い)を認める者に用います。腹部は軟弱で臍の上に動悸を触れ、脈は沈んで弱いことが多く、肝腎脾の血虚による発熱、寒熱往来、日哺(夕方の)発熱、、頭目不清、煩燥、不眠、胸の張り、脇の痛みなどに用いることもあります。

適応症:@婦人科疾患  月経異常(月経痛、月経不順)、産後の回復促進、産後の舌のただれなどに用います。

A皮膚疾患  乾燥性で出血傾向のあるもの

Bその他 体のどこからか出血を起こし体力や免疫力が落ちている場合。

[加減方および留意点]

@四物湯は単独で用いられることは少なく、多くは加味方や合方で用いられます。

A普段から胃腸の働きの弱い人は、食欲不振や胃にもたれることがあります。

B軟便、下痢の傾向のある人は向かないことがあります。

C血虚に気虚を伴い胃腸も丈夫でなく、体力の低下している人には、四君子湯と黄耆、桂皮を加えて十全大補湯とします。⇒p38

D産後の脚気には、本方に蒼朮、木瓜各3、ヨクイニン6を加えます。

E産褥熱には小柴胡湯と合方して用います。

F心臓病で動悸、貧血、めまい、浮腫があったり、更年期障害でめまいや貧血、動悸を伴う場合は、苓桂朮甘湯と合方して連珠飲とします。

G皮膚病には、血熱と血燥、血虚があり痒みと出血傾向がある場合などには、黄連解毒湯と合方して温清飲とします。⇒p29

H高血圧で血虚の人は釣藤鈎4+黄耆3+黄柏2を加えて七物降下湯とします。

Iその他にも処方中に四物湯および四物湯の方意を含むものは、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、芎帰膠艾湯、大防風湯、疎経活血湯、当帰飲子、独活寄生湯、猪苓湯合四物湯、人参養栄湯、当帰芍薬散、温経湯、などがあります。



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