36.平胃散

[構成] 蒼朮【苦温】4、厚朴【苦温】3、陳皮【辛温】3、大棗【甘平】2、乾姜【辛温】1、甘草【甘平】1

蒼朮は胃内の停水を去り、陳皮、厚朴を以て胃の機能を助け、気滞・食滞を順らします。乾姜、大棗は脾胃を温めて消化力を高めます。

[出典および口訣]

@「脾胃和せず、飲食を思わず、心腹胸肋張満刺痛、口苦くして味無く、胸満短気、嘔噦悪心、噫気呑酸、面色萎黄、肌体痩弱、怠惰嗜臥、体重く節痛するを治す。(中略)常に服すれば、気を調え、胃を暖め、宿食を化し、痰飲を消す。」  『和剤局方』

A「食傷後の調理に用いてよし。凡て食消化せず、心下に滞り、又食後腹鳴り、下痢するときは却って快き症に用いる。」        『勿誤方函口訣』 浅田 宗伯

B「平胃散の症は、食消化せずして心下に痞塞する者に用いる也。又夫から通うて凡そ脾胃にかかりし病には余症を問わずして此の方を用いることあり。(略)又此の方、眼疾、或いは頭痛などの類、或いは小児の頭瘡、其の外一切の胃中の不和に因りて来る病は、外症に拘わらずしてひろく用いるなり。何れ飽食膏梁に因りて来る食毒の然らしむるものに用いる也。」「此の方のゆく処は、常に食が胸に痞えてあしきと云うたり、或は、傷食吐下の後には、古方には用いる方なき也。其の症は何か胃中和せずして物の食ひにくきなどと云う処へやる也。」

「平胃も六君子もともに脾胃にあづかる薬にて、平胃は陽位にあるもの、六君子は陰位にあるもの、六君子は脾胃の虚に用いる薬にて別に屹と腹候脈症もなけれども、其の腹を診うに、軟弱にして、不食し下痢などあり、少し食を過ごしても胸に痞えるなど云う症に用いる。小建中湯などに近し、右の症にして、拘攣などあれば建中湯を用いること。」

「是は黄胖にして胃中不和の者にもちゆ。此の症は腹満もあるなり。気急はあまりはげしくなき者なり。」

黄胖はもと胃気の鬱塞する病に取りて平胃を用いるなり。平胃は中脘の満を目的にするなり。黄胖に平胃のゆく処多くある者なり」    『稿本方輿輗』有持桂里 

黄胖:食労疳黄、黄腫、脱力黄ともいう。全身の皮膚が黄色になり、顔や足が浮腫み、動悸、息切れをともなう。

黄胖病:@貧血して動悸、息切れを伴う病気A身体疲労して月経なく、面色黄色く、心悸亢進、胃弱で食欲なく、大便が秘結する病で、若い女性に多い。


[証および適応症]

証:胃内に食毒と水毒が停滞しているのを平らかにするという意味で平胃散という。消化障害があって、心下に痞えて痞満感を訴え、食後腹鳴を起こし、脈、腹ともにそれほど虚弱でないものが目標で、貧血をきたし、腹筋が極度に弛緩したものには用いてはならない。

適応症:

急性胃腸炎、慢性胃炎、胃酸過多、胃・十二指腸潰瘍、胃腸虚弱、喘息、貧血 

[加減方および留意点]

万病回春の飲食門には「飲食自ら倍する者は、脾胃乃ち破るなり」とあり、胃腸の具合が悪いにもかかわらず、よけいに食べ過ぎてしまい、ムカムカと吐き気がしたり、胃痛がしたりすることを食傷といいます。食傷には「食化せず、心下に滞る」状態(食滞)に用いる平胃散の加減方がいろいろと用いられます。用いられる生薬としては砂仁、木香、香附子、枳実、藿香などです。

@香砂平胃散: 平胃散の証で、気滞・食滞の強い者に用います。平胃散去厚朴に香附子3、砂仁2、木香3、藿香3を加え、気のめぐりを良くし痛みを和らげ消化を助ける働きを強くした処方です。

A加味平胃散: 食滞・消化不良が強い者には、神麹2、麦芽2、山査子3を加える。

B平胃散加減(一貫堂):平胃散の証で湿熱症状の強いときは、茯苓、百朮黄連、山梔子を併用する。

C胃苓湯(平胃散合五苓散):平胃散料の証と五苓散料の証を合わせ持つ者に用いる。



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