15.甘草乾姜湯

[構成・証および適応症] 甘草【甘平】4、乾姜【辛温】2

甘草と乾姜の二味からなり、甘草は急迫を治し、乾姜は一種の刺激興奮剤で、血行をさかんにする効果があり、新陳代謝を亢進させ体を温めます。乾姜は附子と並んで大熱薬の代表薬で、寒冷を去り水毒を駆逐する薬材です。しかしこの二つにはその応ずる所に上下の差があります。乾姜は肺と脾に働き、水毒の上迫を治するのが主で、咽中乾、吐逆、咳嗽、喀痰、眩暈、煩躁などの上焦の症候にもちいます。また附子は腎に働き、水毒の下降を治するのが主で、下痢、厥冷、排尿異常、下肢のむくみなどの下焦の症候に用いられます。

甘草・乾姜の組み合わせは、胸中を温め、裏水、嘔吐、喘咳、心下痞、腹痛、頻尿、煩躁、涎沫を治し、傍ら悪寒、四肢厥冷、下痢を治す働きがあります。

[口訣]

@「当に急迫の症有るべし。」(吉益東洞)

A「厥して煩躁し、涎沫多き者に用う。」『方極付言』

B「手足を温め、水飲咽喉を下るを得る。」宇津木昆台

C「救逆の法。急迫を緩め、逆気を降ろし、寒冷を去り、陽気を回復する。」 

奥田謙蔵

D「水毒の遊動・急迫を鎮静緩和し、血行を復旧する。」 湯本求眞

E 胸中の機能障害を回復し、胃腸の虚乏を補う。」  龍野一雄

F「四肢の自覚的寒冷、貧血、咽喉乾燥、煩躁、嘔吐、希薄な喀痰にもちいる。」

藤平健・小倉重成

甘草乾姜湯の方意を持つ処方群

1.陽証に使われる処方

@小青竜湯:(麻黄・桂枝・芍薬・甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏)方中の甘草・乾姜は細辛などの熱薬と協力して胃や肺を温めて裏水を取り除きます。                        

A半夏瀉心湯:(半夏・黄ごん・黄連・大棗・甘草・乾姜・人参)小柴胡湯の[生姜・柴胡]を[乾姜・黄連]に代えた処方で病位は少陽病です。胃中が冷えて消化機能が衰えてくると心下に痰飲が溜まり、そこで気の流通が妨げられるため痞えがおこってきます(心下痞硬)。このため食欲不振や腹鳴、げっぷ、嘔吐が起こります。甘草・乾姜は半夏の化痰作用、人参の補脾作用を助けて水分と気のめぐりをよくしこの痞えや胃腸症状を取ってくれます。

B柴胡桂枝乾姜湯:(柴胡・桂枝・黄ごん・乾姜・甘草・牡蛎・括呂根)柴胡剤の適応する少陽病期の虚証タイプに用いられます。

C苓甘姜味辛夏仁湯:(茯苓・甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏・杏仁)顔色が蒼白く、冷え性で、体力のあまりない人が、冷えなどで体の新陳代謝が低下したために、胃内や胸膈部に痰飲が溜まり嘔吐、うすい水様の痰、喘咳、むくみ、尿不利のある時に用います。

2.陰証に使われる処方

@人参湯:(人参・甘草・乾姜・白朮)甘草乾姜湯に脾胃の虚を補う人参と水毒を集めて小便に流す利尿作用のある朮を配した処方です。

A苓姜朮甘湯:(甘草・乾姜・茯苓・朮)甘草乾姜湯に胃内や消化管の余分な水を尿として排出する茯苓・朮を加えた処方で、人参湯の人参を朮に、または苓桂朮甘湯の桂枝を乾姜に代えた処方とも考えられます。したがってこの処方は温める作用と水毒を除去する作用が強く、その水毒は上衝せず下焦まで下降しています。胃内停水が下半身に固着して寒冷、厥冷を起こし、腰以下の重い感じ、小便自利(頻尿で希薄な尿)と腰痛があります。(身体重く腰中冷えて水中に座するが如く、腰以下冷痛す。)

B四逆湯:(甘草・乾姜・附子)甘草乾姜湯は胸中・胃中を温め上半身の裏寒と水邪を取り除く働きがありますが、附子が加わると全身を温め手足の冷え・

四肢の拘急にも適応できます。貧血のひどいもの、出血傾向のあるもの、胃腸症状を訴える者には人参を加えます。(四逆加人参湯)。また四逆湯より一段と虚証が進み、虚熱のために煩燥したり水毒の症状のある場合は、茯苓4、人参2を加えて茯苓四逆湯とします。 



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