10.柴胡加竜骨牡蛎湯

[構成]

柴胡【苦平】5、半夏【辛平】4、茯苓【甘平】3、桂皮【辛温】3、黄ごん【苦寒】2.5、大棗【甘平】2.5、生姜【辛温】2.5(乾1.0)人参【甘微寒】2.5、竜骨【甘微寒】2.5、牡蛎【鹹平】2.5、大黄【苦寒】1

柴胡桂枝湯から芍薬、甘草を除き、茯苓、竜骨、牡蛎、大黄を加えた処方になっています。


[出典および口訣]

@「傷寒八九日、之を下し、胸満煩驚、小便不利、譫語、一身ことごとく重く、轉側すべからざる者は、柴胡加竜骨牡蛎湯之を主る。」  『傷寒論・太陽病中篇』

A「この方は癇症ならびに癲狂に用いて効果がある。さて最近の病人は10人のうち7,8人は疝気と気滞と肝鬱の病である。特に婦人は肝鬱と癇症の病が多い。この方は傷寒論に胸満煩驚小便不利の者に用いるとあるが、このうち胸満が主証で煩驚・小便不利が客証です。胸満するがために、胸中が煩わしくなり、精神が落ちつかないで、ちょとしたことに驚くようになる。胸膈に気が鬱滞して結ばれ、行らないために、小便不利になる。したがって、この方を用いる標準は胸満である。固より大小便が出にくく煩驚があれば、これはまさにこの方の正証である。(意訳)」              目黒動琢口訣


B「小柴胡湯の証にして胸腹動有り、煩躁驚狂、大便難、小便不利の者を治す。(略)すなわち按ずるに当に胸腹に動あるの証有るべし。」「この方、狂・癇の二症を治す。狂症、胸腹動甚だしく、驚懼して人を避け、ぼんやりしてすわり、ひとりごとを言い、昼夜眠らず、そねみ疑いが多く、自ら死せんと欲し、床に安ぜざる者を治す。癇症、時々寒熱交作、鬱々として悲愁し多夢少寝、あるいは人に接するを悪み、暗室に屏居するを治す。亦当に胸脇苦満、上逆、胸腹動悸等を以って目的とすべし。」

『類聚方広義』尾台榕堂


[証および適応症]

証:

この方の証は第一に胸脇苦満、第二に煩驚、第三に動悸です。

胸脇苦満自覚的には胸から脇にかけて物がつまっているような苦しい感じをいい、柴胡加竜骨牡蛎湯の胸脇苦満は大柴胡湯と同じ程度です。

煩驚煩とはわずらわしいことで、何でも気にし、いろいろと思い悩み、煩悶することです。驚とは驚くことで、驚狂の意味です。つまり煩驚とは、もだえ苦しみ、イライラとして怒りやすく、神経過敏で外からの刺激に対して過大な反応を示す状態で、はなはだしい時は精神錯乱、狂躁状態、譫語(うわごと)などを呈する病態とかんがえられます。

動悸腹部大動脈の亢進によって、臍上に動悸を認めることを言います。腎の気の上衝によって起こるもので、竜骨・牡蛎の主治するものです。

以上より柴胡加竜骨牡蛎湯の証は「がっちりした実証タイプの人で、胸脇部の苦満があり、臍上の動悸があって煩驚の病態、つまりイライラして怒りやすく、もだえ苦しみ、神経過敏となり、ちょっとした刺激に過敏に反応し、驚きやすく、時に精神錯乱状態や狂躁状態を示し、大小便の出が悪い者」となります。

適応症:

@神経系の疾患として、ノイローゼ、神経衰弱、てんかん、不眠症、耳鳴り、更年期障害、血の道症などで実証タイプに用います。

A循環器系の疾患として、心臓弁膜症、心筋梗塞、狭心症、心悸亢進症、心臓性喘息、などで実証タイプに用います。

B成人病の予防では、高血圧症、動脈硬化症、脳出血などの実証タイプに用います。

C代謝系疾患では、バセドウ氏病などの動悸に用いることがあります。

D泌尿器系の疾患としては、腎炎、ネフローゼ、萎縮腎、インポテンツ、夜尿症などで実証タイプに用います。

Eその他、めまい、五十肩、肩こり、円形脱毛症、日射病などに用います。


[加減方および留意点]

@便秘のないときは大黄を除き、癲癇発作の痙攣などには芍薬、甘草、釣藤、黄連などを加えます。

Aこの方は不眠症などにも応用されますが、胃腸が虚弱で体力のない人は、身体がだるく昼間でも眠くてたまらないと訴えられることがある。このときは証が違うので加味逍遥散などに変方します。



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