6.猪苓湯

[構成]

沢瀉【甘寒】、猪苓【甘平】、茯苓【甘平】、滑石【甘寒】、阿膠【甘平】 各3

構成生薬から見た五苓散との違い

五苓散の白朮と桂枝の代わりに滑石と阿膠を入れたのが猪苓湯です。白朮と桂枝は健胃作用がありますが、これに対して滑石と阿膠は鎮静、緩和作用があります。両方の薬方とも口渇があり、水を飲むのに尿の出が悪いというのが目標ですが、猪苓湯は膀胱炎や尿道炎などで尿の出にくいものに用い、五苓散は、胃腸に水が溜まっていて、体の表面に熱があり、その水と熱によって気が上衝してさらに尿が出にくくなり、嘔吐やめまいや頭痛のする時用います。いいかえれば、五苓散は体の上焦と表に熱邪があり、猪苓湯は体の下焦に熱邪があり、気と水が鬱滞する時に用います。

五苓散と猪苓湯の違いの第二点は、猪苓湯には血証があることです。血証とは血に関係のある症状でこの場合には出血の徴候が見られることです。これには猪苓湯の中に入っている阿膠が働き、血熱を冷まして出血を止める働きがあります。血熱があると手足が熱くほてって、じっと布団の中に入れておくことができないといった煩燥状態や胸苦しさ(心煩)、不眠などの症状を呈することがありますが、阿膠にはこの様な症状を鎮静させる効果あります。また滑石にも利尿作用や止渇作用の他に、清熱作用、消炎作用、鎮静作用があるため、五苓散に比べて排尿痛などの痛みや、局所の熱感などの熱症状に対して、より効果的になっています。


[出典および口訣]

@「陽明病、脈浮にして緊、咽乾き口苦く、腹満して喘し、発熱汗出で、悪寒せず、反って悪熱し、身重く、心憤憤……渇して水を飲まんと欲し、小便不利の者は、猪冷湯これを主る。                 『傷寒論・陽明病篇』

A「脈浮、発熱し、渇して水を飲まんと欲し、小便利せざる者は猪冷湯これを主る。」『金匱要略・消渇小便利淋病篇』

B「五苓散の桂枝・白朮と、猪苓湯の阿膠・滑石との夫々2味を比べて作用を識るべし、共に口渇し、小便不利に用いるが、胸中有熱には猪苓湯で、胃の冷えるものには五苓散である。要は温める時には桂枝・白朮で冷やすのは阿膠・滑石である」 

[証および適応症]

証:口渇して水を欲しがり、尿量減少して出しぶる者で、発熱、血尿、残尿感、排尿痛、頻尿、むくみなどがあるもの。

適応症:膀胱炎、尿道炎、尿路結石、腎盂炎、血尿を来たす疾患、諸出血(下血、喀血、子宮出血)、不眠症、神経症など。


[加減方および留意点]

@猪苓湯合芍薬甘草湯 尿路結石などの痛みなど急迫症状の激しいときは芍薬甘草湯を合わせます。

A血尿がなかなかとれないときは桔梗3、車前子2を加味し、貧血の症状が出てきたときには四物湯を合わせます。

Bこの方は血尿の他にも腸出血や子宮出血に応用されますが、血熱症状を伴っていなければ効果がありません。



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